Walboroキャブの構造を知ろう

 

 最もポピュラーなキャブレターであるワールボロキャブ。
 ここでは、その内部構造や仕組みを説明します。
 点検ポイントなども紹介しますので、参考にしてみてくださいね。

 尚、文中「On Mouse」と指示のあるものは、写真の上にマウスを置と説明が写真上に表示されます(画期的?)。

 これがワールボロキャブ。
 ストッククラスのエンジンではほとんどこのキャブが使われているというポピュラーなもの。それだけに、各チームも使い慣れていて、チームごとに独特のセッティング方があると言われています。

 ここでは、WB3Aという型番のものを使用していますが、他の型番のモデルでシステムは同じですので参考にして下さい。

 

 さて、まずはWalboroのマークの入っている方から開けてみましょう。バラス前には、内部にゴミが入らないようにキャブの外装をキレイに洗浄して下さい。さあ、洗浄が終わったら4本のネジを緩めます。

 

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 フタを外すときの注意。
 中にはこのように二重にポンプとガスケットが入っていますので、破かないように慎重に作業して下さい。でも簡単です。長い間メンテしていなかった場合、ガスケットなどが張り付いていて剥がれにくい場合があります。その場合は、端からゆっくりと「ペリペリッ」って感じで剥がします。

 ここでキャブの作動の原理の説明。
 クランクケースの圧力がキャブに繋がっています。エンジンのピストンが上昇すると、キャブには吸引の負圧がかかります。ピストンが下降すると、今度はキャブに圧縮の圧力がかかります。この圧力をキャブに取り込んでポンプを作動させているのです。

 写真中の「ポンプ」の部位はペコペコした状態で、圧力変化で伸び縮みするのです。ピストンが上昇し負圧がポンプに掛かると、ポンプが膨らみ「弁1」から燃料を吸い込みます。反対にピストンが下降し、ポンプに圧力がかかると「弁2」に燃料を送り出すのです。吸い込む側の弁が2枚で、押し出す側の弁は1枚ですね。これは、負圧の持つ力が弱いためですね。注射器などで水分を吸い込んだ経験のある方なら何となく経験でお分かりでしょうけれども、吸い込むときは押し出すときよりも力がいるのですね。

 さて、ピストンバルブエンジンがどうやってキャブに燃料を吸い込んでいるのか、御理解いただけたでしょうか?

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 それでは、ポンプを取り、内部を見ましょう。燃料がどこをどう流れていくのかが解ります。

 1〜3までは「吸い込まれていく」状態。
 4、5は押し出されていくのです。片道進行の弁の仕事を、うまく利用していることが解ります。

 5番のところにあるネットは、ワールボロ最大の弱点であるフィルターです。ここにゴミがつまって泣いた経験を持つカーターも多いはずです。このネットの直径は、僅か8ミリ程。ほんの小さなゴミでも燃料の流れを妨げられてしまうのです。フィルターの状態は、常にメンテナンスしたほうが良いですね。

 ちなみに、私がメンテナンスした中には、2の穴に毛玉がつまっていたケースもありました。ゴミ進入→燃料がエンジンに行かない→燃料薄い→エンジン破損です。気を付けましょう。

 さて今度は反対側、ダイヤフラム方面を見てみましょう。こちら側は、実際にキャブがエンジンに送り込む燃料の量を制御している部分です。

 開けるためには、やはり4本のネジを緩めます。

 すると内部はこの状態。
 この際に注意して欲しいのは、まず先に金属のフタだけを外すということ。黒いダイヤフラム部分は内部とリンクされているので、慎重にこの状態から外す必要があります。

 一気に外すようになれるのには、経験を積んでからですなあ。引っかけて外したりすると、中のメタルが影響を受けます。これ、キャブのセッティングに重要なダメージになりますのでお忘れなく。

 ダイヤフラムは、このように内部のメタルとリンクされているのですな。要するに繋がっているわけ。外すときには、写真右方向にスライドさせるようにして行きます。

 ダイヤフラムが外れた状態。
 ダイヤフラム中心部と、キャブ内のメタルとが繋がっていました。でも見て解るように、メタルは片側が切れた状態で、そこにダイヤフラムが繋がっていただけなのでスライドさせると取れるのね。

 

 そしてこれが。キャブの心臓部。メタル。

 いろんな呼び方をする人がいますが、右から「ニードル」「レバー」「スプリング」としましょうか。

 ポンプによって送り込まれる燃料の量を、このセットで調整しているのです。具体的には、ニードルはフタの役割をしています。ポンプからの燃料の圧力によって、フタを開けたり閉めたりするのです。そのタイミングを司っておるのがスプリングとレバー。スプリングの力が強ければ、燃料はあまり入ってきません。またレバーがニードルを強く押さえていれば同様です。

 主な場合、スプリングの変更が認められていないレースが多いので、レバーの角度、スプリングの全長等を調整してベストセッティングを求めるのです。極めて経験が必要で、高度な部分です。

 が、多くの場合、純正のノーマルのままでも走行はバッチリですから、無理せずそのまま使うことをお奨めします。

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 燃料の流れを見ましょう。
 燃料は、ニードルから入ってきます。
 ポンプによって、どんどんどんどん燃料が入ってきそうですが、ダイヤフラムがそれを制御します。この部分に大量の燃料がたまると、ダイヤフラムが膨らみます。すると、レバーを引き、燃料がそれ以上入ってこないようにするのです。ああ、良く出来ているなあ。

 ニードルを押しのけて入ってきた燃料は、ローはそのまま出口に向かいます。エンジン回転に関係なく、燃料が出続けていると考えていいでしょう。

 対してハイ側は、一つの弁を経由しています。この弁は、写真でキャブの上に置かれたフタの真ん中にある直径2ミリほどのネットの部分にあります。

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 これがその弁です。

 エンジン回転が低いうちは、上記のようにロー側の燃料ルートからどんどん燃料が出ていっているので圧力も低く、この弁は閉まったままです。

 エンジン回転が上がり、燃料がどんどん出ていても追っつかなくなってキャブ内の燃料の圧力が上がるとこの弁が開きハイ側に燃料がが送られるのです。全く良く出来ていますね。

ヒント:ということは、キャブのチェック圧を低くするとどんどん燃料が入ってきて、このハイ側燃料の供給も早く(より低回転で)始まり、逆もまた真ってやつですな。このあたりがチェック圧調整の肝なのだな。

 

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 このようにして、キャブレターは圧力の変化でロー側及びハイ側への燃料供給を行っているわけですね。

 そして、最終的な流量の調整を行っているのが、皆さんも日常的に調整されているであろうニードルです。ニードルにはマイナスドライバーで調整する「Loニードル」と、手で回して調整する「Hiニードル」があるのはご存知の通りです。

 ロー1時間30分、ハイ30分とかって呼んでるやつですね。ここまで読んできた方には解ったかも知れませんが、ローとハイの値は、最終的に合計値です。つまり、ローがあまり開いていないと、ハイ側に燃料が流れ出すのが早まります。ローとハイの切り替えポイントは、ローの開き具合でかなり変わってきます。例えば、上記セットがベストのエンジンを、ロー1時間、ハイ1時間といったセットでの走行も可能なのですね。ただし、ハイニードルは開けていっても限度があります。それは、ローの燃料拭きだし口とハイの燃料拭きだし口のサイズの差です。ローは2こ穴があるのに対してハイは1こ。おのずと最大燃料拭きだし量には限界があるのです。さらに、こういったセットの場合、最高回転で走っているウチはいいのですが、立ち上がり加速などは悪いはずです。それは、本来ローで供給されるべき燃料が足りないからですな。知らなくても、先輩の教えてくれるセットで黙って走れるカートですが、構造を知ることでより深い活動ができるといいですね。

 この写真は、メタルのニードルがせき止めていた燃料が入ってくるポイント。撮影成功だもんね。

 キャブの燃料の全てが通る穴なのですが、意外に小さいのであります。ここに小さな異物が入ると、キャブの燃圧がゼロになって、被っちゃって掛からないエンジンを生みます。気を付けましょう。

 以上、ワールボロキャブの内部構造を解剖してみました。
 ほとんどのカーターが、この部分はショップ任せだったことと思いますが、せめてゴミの点検と除去に関しては御自分で出来たらいいですね。1日走行して、最後の片づけの時にゴミの除去をするように習慣になるとベストですが。

 レバーやスプリングの調整は、ショップに任せるのが無難です。あの部分はめっちゃくっちゃシビアです。ホンの少しの寸法狂いで、かなり走りのフィーリングが変わってしまいます。それに、ショップの調整って、悪くてもショップのせいに出来ますしね(^o^) 筆者自身も、始めの試行錯誤の段階でかなりの量のメタルを消費しました。

 良く出来たショップの場合、キャブのセッティングは一辺倒ではなく例えば「ベストセッティング」「初心者用セッティング」「クセのあるドライバー用のセッティング」など数々のセットのノウハウを持っているはずです。気楽にショップに相談して楽しいカート生活を送って下さいね。

 

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